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既存賃貸住宅の開口部断熱改修を実施

2025.06.09

後藤氏(左)と川崎氏

 先日、日本板硝子S&S㈱(本社=東京都、大野義之社長)の紹介で大阪市北区にある大阪市住宅供給公社(略称・大阪市すまい公社)の企画部を訪問し、「既存賃貸住宅における開口部断熱改修」についてお話を伺った。出席者は、同公社企画部企画事業課担当係長・渡邊望氏と同事業課・川崎翔悟氏、それに今回の窓改修工事に協力した、日本板硝子S&S㈱・有村俊秀部長、井関雅也主席も同席した。

 川崎氏の説明によると、事業概要については、の既存の公社賃貸住宅において開口部の断熱改修を実施。施工性・費用対効果などについて検証・情報発信を行うとし、検証内容については①温湿度測定②アンケート・ヒアリング調査③電気代・ガス代の調査を行った。

 今回の検証目的は、本事業の調査結果を活用し、賃貸住宅の省エネルギー効果と健康面等の価値(QOL)向上効果も併せた情報を発信することで、賃貸住宅の省エネ化に資する行動を促進していくことを目的とすると説明した。

 現状の課題として大阪市内における、省エネルギー設備等の対応状況をみると、所有関係別では持ち家に比べて借家の方が、建て方別では、一戸建てに比べて共同住宅の方が、省エネルギー設備の設置状況や窓の断熱性に配慮された住宅の割合が低くなっており、これは、いずれの割合も全国と比較して大幅に下回っている。

 大阪市すまい公社としては推定原因として①賃貸住宅の省エネ化による入居促進効果が不明瞭②工事費をかけて省エネ化しても、賃料に反映できるか不明瞭③省エネ化に要した改修工事費用をどれくらいで賃料回収できるか不明瞭とし、これらを明確にすることにより大阪市内の賃貸住宅の省エネ対策の推進に寄与すると考えるとした。

 発信内容としては、入居者の快適性や節約の意見、住みやすさとか家賃アップ許容、工事費用などのデータを纏め、それをSNS上やいろいろな媒体で記事にして広めたいとしている。

☆事業工程

➀内窓設置工事、ガラス交換工事(完了)②温湿度測定=2024年12月1日~2025年2月28日(完了)、2025年7月1日~同年9月30日予定、同年12月1日~2026年2月28日(予定)③アンケート・ヒアリングを測定完了後に実施(全4回実施予定)

☆工事内容(全8住戸で実施)

 ・内窓設置工事(6住戸実施)=樹脂内窓、単板ガラス5㍉

 ・ガラス交換工事(2住戸実施)=真空ガラス6・2㍉、現使用のアルミサッシはそのまま

☆対象住戸基本属性

子育て世帯=4世帯、高齢者世帯=3世帯、夫婦共働き世帯1世帯

年齢層20代~90代まで21人、子ども5人

☆住戸情報

 住戸専用面積59・75平方㍍と69・20平方㍍のタイプ

☆工事比較

 ガラス工事の方は、ガラス交換のみで、簡単に施工ができ、いままで通りに窓の利用ができる。一方、換気小窓の部分がガラス交換できず、また、既存のアルミサッシをそのまま使用したため、断熱性能は内窓と比較すると落ちるかも。内窓は、断熱性能は良いが、窓の開け閉めが煩雑になるという面もある。

 施工後の入居者の声としては、防音効果を上げる住戸が多かったという。大阪市住まい公社としては、これらのデータを纏め、大阪市内にある共同住宅等のオーナーに窓の断熱改修を勧めたいとしている。

 

 記者の目 公社が行っている調査は2050年のカーボンニュートラル達成に向け、大阪市内で遅れている共同住宅の窓改修を促進すること。今回は、同公社が管理している2768戸の内8戸を改修した。調査結果次第では、公社が管理している物件のすべてを改修すると思って話を聞いていたが、予算の関係でそういうことでもないようだ。市の予算に課題があるのなら、住民に負担してもらうことを考えてよいのではないだろうか。今なら、住民は補助金の対象にもなる。公社の規約を変更し、出ていくときに、原状復帰しなくても良いという条件にすれば、住民は窓改修を行い、賃貸物件でも断熱改修は進むのではないだろうか?

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